PCBとその影響とは?

PCBとはPolyChlorinatedBiphenyl(ポリ塩化ビフェニル)の略称で、人工的に作られた、主に油状の化学物質です。PCBの特徴として、水に溶けにくく、沸点が高い、熱で分解しにくい、不燃性、電気絶縁性が高いなど、化学的にも安定な性質を有することから、電気機器の絶縁油、熱交換器の熱媒体、ノンカーボン紙など様々な用途で利用されていましたが、現在は製造・輸入ともに禁止されています。

PCBが使用された代表的な電気機器等には、変圧器やコンデンサー、安定器があります。PCBが含まれている変圧器やコンデンサーは、古い工場やビル等で使用されており、安定器は古い工場や学校等の蛍光灯等に使用されていました。なお、工場や学校などの施設に使用されていた蛍光灯が対象で、一般家庭の蛍光灯にPCBを使用したものはありません。

脂肪に溶けやすいという性質から、慢性的な摂取により体内に徐々に蓄積し、様々な症状を引き起こすことが報告されています。PCBが大きく取りあげられる契機となった事件として、1968年(昭和43年)に食用油の製造過程において熱媒体として使用されたPCBが混入し、健康被害を発生させたカネミ油症事件があります。カネミ油症は、昭和43年10月に、西日本を中心に、広域にわたって発生した、ライスオイル(米ぬか油)による食中毒事件です。症状は、吹出物、色素沈着、目やになどの皮膚症状のほか、全身倦怠感、しびれ感、食欲不振など多様です。

PCB濃度

高濃度PCBとは?

PCB廃棄物は、PCB濃度により高濃度PCB廃棄物と低濃度PCB廃棄物に分類されます。高濃度PCB廃棄物はPCB濃度 が0.5%(=5000ppm)を超えるものとなります。 高圧変圧器・コンデンサー等の高濃度PCB廃棄物は中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)で処理を行っています。低濃度PCB廃棄物については環境大臣が認定する無害化処理認定施設及び都道府県知事等が許可する施設で処理 を行っています。

高濃度PCB廃棄物 低濃度PCB廃棄物
定義 PCBを使用した電気機器廃棄物
(PCB濃度が0.5%(=5000ppm) を超えるもの)
微量PCB汚染廃電気機器等:非意図的にPCBが混入した廃棄物
低濃度PCB含有廃棄物:PCB濃度が5,000mg/ kg以下の廃棄物
処理先 中間貯蔵・環境安全事業(株) (JESCO) 無害化処理認定施設 PCBに関する特別管理産業廃棄物処理の許可施設

※PCBが使用された代表的な電気機器等には、高圧変圧器や高圧コンデンサー、安定器があります。変圧器(トランス)とは、ある交流の電圧をそれより高いか、又は低い電圧に変える装置であり、コンデンサーとは、電気を一時的に蓄える、電圧を調整する、位相を変化させる、といった効果を持つ装置です。 (中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)は中間貯貯蔵事業とPCB廃棄物処理事業を行う、国の全額出資により設立された特殊法人で、現在高濃度PCB廃棄物を処理できる唯一の事業体です。)

高濃度PCBと微量PCBについて

絶縁油の揮発料の比較図

国際条約

PCBは国際条約で厳格に定められています

PCB等の残留性有機汚染物質における日本国内の取扱いに関しては3条約等の国際条約に 基づき厳格に定められています。

1.残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)【2004年5月発効】

POPs条約とは、環境中での残留性、生物蓄積性、人や生物への毒性が高く、長距離移動性が懸念されるポリ塩化ビ フェニル(PCB)、DDT等の残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)の、製造及び使用の廃絶、排 出の削減、これらの物質を含む廃棄物等 の適正処理等を規定している条約です。(日本は2002年8月に条約締結)

2.有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼール条約【1992年5月発効】

バーゼール条約とは、一定の有害廃棄物の国境を越える移動等の規制について国際的な枠組みおよび手続きを規定 している条約です。(日本は1993年9月に条約締結)

3.国際貿易の対象となる特定の有害な化学物質及び駆除剤につ いての事前のかつ情報に基づく同意の手続に関するロッテルダム条約(PIC条約)【2004年2月発効】

PIC 条約とは、先進国で使用が禁止または厳しく制限されている有害な化学物質や駆除剤か、 開発途上国にむやみ に輸出されることを防ぐために、締約国間の輸出に当たっての事前通 報・同意手続(Prior Informed Consent:PIC) 等を規定している条約です。(日本は 1999年8月に条約締結)

国際条約集

国内法と罰則規定

PCB廃棄物の適正処理に関する罰則

誤って違法に処理を行う事は国内の罰則等が適用されるだけでなく、 国際法義務違反により国家責任を追求されるおそれがあり、主要国並び に中国や韓国などの近隣諸国との外交問題に発展する可能性もあります。

日本国内の自治体及び事業者様におかれましては国際条約に基づいた 処理期限内にPCBを安全に処理する事が求められています。 PCB廃棄物の適正処理は、法律で義務付けられています。また、2001年 にPC B廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法が制定されました。 日本国内では以下の罰則が規定されています。

PCB含有廃棄物に関わる主な罰則規定一覧

違反事項 罰則
・譲り渡し、譲り受け
・期間内処分の改善、命令違反
3年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はその併科
・保管状況の届出義務違反、虚偽の届出 6月以下の懲役又は50万円以下の罰金
・承継の届出義務違反、虚偽の届出
・検査又は収去の拒否、妨害、忌避
30万円以下の罰金
・不法投棄 5年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、又はその併科
法人には3億円以下の罰金

ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(24~27条)

平成38年7月15日までに適正処理を行わず、環境大臣又は都道府県知事による改善命令に違反した場合
3年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金又は併科
環境省令で定める場合を除き、PCB廃棄物を譲り渡し、又は譲り受けた場合等
3年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金又は併科
PCB廃棄物の保管及び処分の状況の無届出、虚偽の届出
6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金
PCB保管事業者の相続、合併又は分割により事業を承継した法人の承継の無届出又、虚偽の届出等
30万円以下の罰金

廃棄物の処理及び清掃に関する法律(25~33条)

不法投棄
法人には1億円以下の罰金
PCB等の特別管理産業廃棄物の収集運搬や処分の無許可営業、 措置命令違反、投棄等
5年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金又は併科
基準不適合な収集運搬・処分業者への委託等
3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又は併科
マニフェスト虚偽記載等
50万円以下の罰金
PCB等の特別管理産業廃棄物の管理責任者をおかなった場合等
30万円以下の罰金

※中間貯蔵・環境安全事業(株)ホームページ「保管事業者の皆様→書式等のダウンロード→参考パンフレット」より抜粋
JESCOホームページ